『100日後に死ぬワニ』に感じたモヤモヤを言語化してみた

きくちゆうき先生の『100日後に死ぬワニ』が昨夜、完結した。

作者のTwitterをフォローしていなくてもTwitterで見ない日はないほど拡散されていた超・人気作品だったが、現在、完結直後に怒涛の商業展開を始めたことを理由に大炎上している。

今日は今回の騒動のモヤモヤポイントを思うままに書いていきたい。

前置き:金稼ぎ自体は悪くない

まず、私が前置きとして言いたいのは「金稼ぎ自体は悪くない」ということだ。

クリエイターは神様のような存在だが、中身は私たちと同じ人間なのでお金を稼がないと生きていけない。

だから、書籍化・グッズ化・映画化などは「いずれ」されるだろうと思っていたし、それらはクリエイターとしては何ら問題のないこと(むしろ当たり前の権利)だと思っている。

また、商標登録などの手続きも、第三者に取得され権利を悪用されることを防ぐために「手を回す」べきことである。

私がモヤモヤに感じた部分は以下の3点だ。

・「ワニの死」の余韻が告知によって奪われた
・「ワニの死」を待ち構えていたかのような怒涛の商業展開
・特性的にミスマッチな書籍化(と映画化)

順番に説明していこう。

モヤモヤその1:「ワニの死」の余韻が告知によって奪われたこと

1つ目が、「ワニの死」の余韻が告知によって奪われたことだ。

『100日後に死ぬワニ』は、主人公のワニくんの何の変哲もない日常が4コマ形式で描かれていて、4コマ目の下には決まって「死まであとX日」というタイムリミットが書かれている。

そして、1日1回しか更新されない。

そうした特性から、ワニくんの「今日の日記」を見ているような、現在進行系の物語として親しんでいた読者も多かったように思える。

読者には物語のゆく末を見届けるだけでなく、読了後の「100日間見守ったワニが死んでしまった」喪失感、余韻をじっくりと噛みしめるという楽しみ方もあった。

だが、諸々の告知が100日目、しかもまだ読んでいない人も大勢いる公開直後というタイミングで続々と告知が発表されてしまったことで、その楽しみ方が奪われてしまった。

結果論にはなってしまうが、せめて「喪に服す」期間を作って、皆が「ワニくんの死」を受け止めたタイミングで諸々の発表があれば、ここまで大きく炎上しなかったはずだ。

モヤモヤその2:「ワニの死」を待ち構えていたかのような怒涛の商業展開

2つ目は、「ワニの死」を待ち構えていた怒涛の商業展開である。

『100ワニ』のグッズは、アクリルキーホルダーやマグカップなどの有名どころから、アイマスクやランチボックスなどの(キャラグッズとしては)マイナーな商品まで計66種あり、デザイン違いも含めると軽く100種を超える。

有名作品の一番くじでもなかなかお目にかかれないほどの「豊富すぎる」ラインナップだ。

グッズそのものはファンとしてもありがたいが、釈然としないのは、これらの販売開始がワニの死の翌日(つまり今日から)であったこと。

「100ワニ追悼ポップアップショップ」という不釣り合いなショップ名も相まって、まるで「ワニの死」を待ち構えていたようであった。

これは推測になるが、おそらくグッズを「売る」側は『100日後に死ぬワニ』のことを「金のなる木」程度にしか思ってなかったんじゃないだろうか?

作者や関係者の腹の(うち)は分かりようもないが、「ワニの死」を待ち構えていたかのような怒涛の商業展開によって、『100日後に死ぬワニ』の世界が壊されてしまったように感じてしまった。

(もし私がネズミくんだったら、「親友が死んだこと」「親友の死を商売に利用されたこと」で2回泣いていたことだろう。)

モヤモヤその3:特性的にミスマッチな書籍化(と映画化)

3つ目は、特性的なミスマッチである書籍化(および映画化)のことだ。

前置きでも言ったが、クリエイターの書籍化・映画化について、私は否定的な考えを持っていない。

たが『100日後に死ぬワニ』の書籍化は、特性的にミスマッチではないのか? という疑問がある。

具体的に言うと、Twitterで作品を読んできた人は、自分たちと同じスピードで進む「ワニくんの1日」を100日間見守ったが、書籍の場合はそうはいかない……ということだ。

おそらく1時間もかからずに、「ワニの4コマ漫画」を100回分追いかけることになるはずだ。

それは『100日後に死ぬワニ』じゃなくて「1時間かからずに死ぬワニ」であり、感動もかたなしではないだろうか。

映画版はまだどうなるか分からないが、Twitterで過ごしたような「ワニとの100日間」を追体験することはできないだろう。

あえて厳しい言い方をすると『100日後に死ぬワニ』のストーリーはとてつもなく平凡である。

バイト先で先輩に恋をする。嫌われてると勘違いしてバイトを辞める。病んだけど、友達に励まされて立ち直る。新しいバイト先での出会いをきっかけに先輩と復縁し、デートする。桜の開花宣言をテレビで見て、仲間とのお花見を楽しみにする。だけどお花見に行けずに死んでしまう。……

中には難しい考察をしている人もいるが、大筋はこんな感じだ。

このストーリーが特筆して面白いかと聞かれればそうではなく、「現在進行系でみんなで読める」という点が作品・物語を大きく引き立てていた。

だから、書籍版・映画版の『100日後に死ぬワニ』は、特性的にミスマッチで、名前ばかりの「ただの凡作」になってしまうのではないかと危惧している。

* * *

作品も、作品の終わり方も、100日間休まず更新を続けた作者も、いきものがかりとタッグ曲『生きる。』も素晴らしかっただけに、とても残念だ。

今日はこのへんで。